主に食糧や輸入制度(豚肉の差額関税制度)の問題点などについて解説しています。

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TPP11発効後の日米貿易交渉への影響 1 牛肉


牛肉: 

TPPを離脱した米国産牛肉の日本市場でのシエアは当然減少!

図1の通り、日本の輸入量の約59%を占めるTPP11参加国からの輸入関税が初年度から27.5%と1割以上下がり、その後も徐々に関税が下がり10年目には20%関税、16年目には9%関税となる。 

出典:財務省貿易統計を筆者がグラフ化

TPPを離脱した米国産牛肉は逆に初年度から非常に不利なのは明白である。比較的品質が似通っているカナダやメキシコ産や豪州産穀物肥育牛肉が27.5%の関税で輸入されるのに対して、米国産牛肉には依然として11%も高い従来の38.5%関税が適用されるわけである。 そのため、米国産牛肉がTPP11 参加国と日本市場で競争するためには関税分、すなわち少なくとも11%は安く輸出しなければならないのである。

しかしながら、北米での牛肉の国際相場は米国、カナダ、メキシコともほとんど同じ価格であるため、米国の牛肉パッカーが日本向けに国際相場より11%安い価格で輸出することはまずありえない。 結果としてカナダやメキシコ、その他の日本以外の国に輸出した方が良いという事になるのは、当然の成り行きであろう。

従って、TPP11発効以降は、全体的に牛肉の日本市場でのシエアはTPP11参加国である豪州、NZ、カナダ、メキシコが伸ばし、結果として米国が現在の41%のシエアを維持することができずに落ち込むことが予測される。

牛丼用のバラ(ショートプレート)やカルビ焼肉用のショートリブなど日本向け特殊アイテムを除く、米国産牛肉は、以下のように玉突き輸出が増加すると考えられる。

「米国産牛肉⇒カナダ・メキシコに輸出(カナダ・メキシコでの米国産牛肉が消費増)⇒カナダ・メキシコ産牛肉⇒日本向け輸出増」という流れだ。

当然米国産牛肉は、日本向け輸出が減少(カナダ・メキシコ向け増加)となり、対日赤字が増加する。年が明けて、そのような状況が実際に起こってくれば、米国が自らTPPから離脱したという経緯を棚に上げて、米国の食肉生産者の不満は爆発することになるのは明らかである。 先述の通り、米中貿易戦争で被害を受けていることも米国食肉生産者の不満に輪をかける事になるだろう。

その結果、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」のゴリ押しが発揮されるはずである。当然米国は、TPP11より有利な条件での二国間FTA(自由貿易協定)締結を日本に強く圧力をかけて来ているのではないか。 その牛肉交渉の余波が豚肉交渉にも波及するのではないかと筆者は考えている。

 

 

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